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一本の樹木

2013年01月22日 09:51

日本詩人会が1月19日に早稲田奉仕園であった。詩朗読を仰せつかり 3編朗読した。

平凡で抑揚もなく一番下手な朗読であったが、下手なりに慰めの褒め言葉を頂いた。

その1編を書いてみます。

  「一本の樹木」

傾く枝を矯正して

垂直にまたは隣の枝に重ならないように導き

快い無理を強いて育てている

 

思いがけないところの

思いがけない樹木を

うれしく輝かしく思いながら

 

一枚の葉が増し

一本の小枝が伸び

しっかりと大地に根を張る日々

 

樹木の向こう側の風景

樹木の背負った物語り

葉の裏側にも触れて

 

自然の営みの不思議を喜び

あからさまに語るをはばかる

距離と傾斜と程よい関係

 

風に叫び陽に応える

素知らぬ体の樹木を

素知らぬ顔した関心が凝視する

 

誰をも傷つけず

誰にも見咎められず

生命の泉のほとりに育ち繁る

 

春は素直に若緑を光らせ

夏は精一杯背伸びをする

秋は充実に葉先を広げる

 

冬は屹と梢を挙げて

厳しさをものともせず

直立する

 

そんな樹木が育っている

そんな樹木を見ている

そんな樹木をいとおしむ

今が大切

2013年01月20日 10:22

  「今が大切」

今が大切今が大切と思いながら今を捉えもせず

先を先をと案じながら 先のことばかり考えているから

今が大事だと 打ち据えても浮ついている

現在があってこれからが積まれ 充足感が生まれるのに

先へ先へと浮ついていたら土台は積まれず 崩れるよりない

現在を大事にしっかり生きて 明日をまた積んで生きたい

百歳まで なぁんてね

2013年01月17日 16:30

  「百歳まで なぁんてね」

肉体と精神が向かい合っていなければ すれ違っていくばかりだ

呼んでも手を振るばかり 知った人が会釈して通る 

手を振って通り過ぎる詩に ふと涙ぐんだりする

向かい合って心と体が健やかで 

百まで生きるといってみる

追いかけ続けると呟いてみる

待春

2013年01月15日 15:37

  「待春」

しばらく腰痛で電気ウォーカーを使わないでいた

少しずつ腰痛も治まり足腰の弱りを痛切に感じ始めた

歩幅を大きく ゆっくり 短時間の歩きをする

太ももの裏が数日痛む

だんだん慣れてくれば治るものと思いながら

10分くらいから徐々に増やして歩いている

元気を取り戻して友に会いたい

元気印を花冠にして笑顔で春に会いたい

あの牛は誰

2013年01月14日 19:34

  「あの牛は誰」

子供のころ ご飯を食べてすぐ寝ると 

牛になるよと叱られた

ねえお母さん あの牛誰だったの 

ご飯食べてすぐ寝た人だよね

 

死ねばいいと思った人はたいがい死ぬよ

と誰かのたもうた ねえあの死んだ人

誰に死ねばいいと思われたんだろうね

 

呪詛の波長を受けた死か

横になっただけで牛になった少年か

笑い話か 笑えぬ話か 

冷たく背筋を下っていく

――キャンバスいっぱいに寝そべっている牛

今年は80歳 つれづれのままに

2013年01月07日 18:32

  今年は80歳 つれづれのままに

新年も めでたくもあり めでたくもなし と言ったところです。

心新たに 何に向かって歩き出そうか

小さい願いを掲げてその先の大きな希望を 

萎えた足震える手で 心底に何が潜んでいるか 

大物でも釣り上げて 快挙と腕突き上げてみたいが

つれづれに想うこと

2013年01月07日 11:23

   つれづれに想うこと (80才が3月)

 新年もめでたくもあり めでたくもなし といったところで何か区切りをつけてみる。

 心新たに今年は何があるだろう何を目標にし 何に向かって歩き出そうか

 ぼんやり目標を探ってみる。衝撃的何かがあるのも困るし 転倒しないこと迷惑をかけないこと

 小さい願いを掲げて 大きな希望を求め追いかけてみる。水底には何が潜んでいるか

 大物でも釣り上げて快挙と 腕で突き上げてみたいが メダカでも飼おうか。

諦めの風がうたうハミング

2013年01月02日 20:27

おめでとうございます 今年も元気で楽しく 生きてゆきたいと願っています。よろしくお願いいたします。

   「諦めの風がうたうハミング」

 退職金一時払いの終身年金

 バブルがはじけて 老後が豊かにとは夢のまた夢

 年利が落ちて 年金生活者は生かさず殺さず

 あそこを少し ここを少し

 削って締めて 我慢 縮小 と 設計図を引き直す

 

 貧乏旅行も回数を減らして

 それでも スケッチの何枚かが仕上がって

 詩が死とピーンと一直線に 結ばれたらいい

 

 貧しくて豊かな老後が

 ハミングして 私の周りを巡るではないか

 

ふる里

2012年12月29日 15:47

  「ふる里」

少年は翼が欲しいと いつも思っていた

青空を思いきっり飛んでみたいのだ

青空は窓であり 夢であり 悲しさでもある

そして ふる里をつつむ大きな腕だ

 

山や町を浮かび上がらせると

吸い込まれてしまう青空が必ずあって

小川が大海に注ぎ込む

少年のかくれた力が音を立てて流れている

青空に高く輪を描くとんびよ

 

少年は翼が欲しいといつも夢見ている

洗  う

2012年12月28日 10:05

洗  う

女は炊事をし洗濯をし

雑巾をしぼり

こまめによく洗い流す

 

油で汚れた皿

残り物がこびりついた椀

昨日の思いで汚れた手指

登り坂でつまずいた膝

何でも洗い落として一息入れる

新しい皮膚が新しい呼吸をふっと深くすると

洗いざらした顔を昨日の顔の上に被せ

又 安心してせっせと洗い出す

 

時をもみ 年月をもみ

思いをもみ

行く先々でもみ 洗い流して

そして

腕まくりしてたくましく

鼻歌まじりでさみしさをも洗い

真っ白に仕上げてみせる

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