詩 空き部屋の怪「詩集風を抱くより」

2013年08月15日 09:19

   空き部屋の怪

ここに何年か空いたままの部屋がある

あなたを招き入れるための

香をたいて 清々しい部屋

 

あなたを捉えて逃がさないための

足かせ 手かせの用意された

冷たく静まり返った部屋

 

小鳥を窓辺でうたわせ

花を手あたり次第折ってきて飾っても

なお 寒々とした部屋

 

入り口には透明な罠を張り

みがまえを脱いで ゆったりと

まどろんで待つ

 

ある日

悪いこと全部やってみたくて

かかった獲物を口一杯ほうばって

身ぶるう弱虫の体液を

心ゆくまで 吸い上げてやる

 

寂しさと なお飢餓の

この部屋

いつの頃からか 

ひそかに

座敷わらしの足音を聞く