つれづれ想県詩人会(北岡淳子さん「詩と私」講演資料)

2013年08月01日 09:56

   蛍    星野 徹  (参考資料1)

林の闇を抜けると

ほの白く浮かび上がるいつもの沢

故意に見ないようにして

水音に 一歩一歩 近づいてゆく

そうしたわたしにお構いなく

早くも ついと流れるひかり

いつもの蛍だ

 

あれがあなたの

からだからあくがれ出た玉だとは

詩的表現の上では可能でも

現実にありうることだろうか

 

やむなく 流れるひかりを眼で追う

ひかりはたゆたい 走り

いざなうように旋回し

明滅をつづけて

遠離る気配もない

 

あれがあなたの

殊に 潤いのある場所に孵ったとするなら

その場所が もし この沢だとするなら

思考も からだも

ほの白いひかりの方へ

引き寄せられる思いがした

 

不惑を超えて十一回目の夏

ずぶ濡れになって

沢から這い上がった わたしは

あやしく発行していた