詩「六十代は楕円球」(詩集風を抱くより)

2013年08月20日 08:43

   六十代は楕円球

花になってみつめた

葉になって風にゆれた

のばした蔓でまきあい

引き寄せあった青い旺溢

 

みずみずしさは蒸散をつづけ

青から黄に紅にと

季をかさね枯れ葉色になって

枝で吹かれている

 

沈黙は寂しく

別れは堪えがたいと

こぼれ落ちる日常から

ふと拾い上げる想念(おもい)

 

結びあった指を一本一本

残酷に引き剥がして

支え合っていたものを

こぼしていく捨てていく

 

潜み近づいてくる

覚悟の背後

ゆるゆると準備はなされる

大切な大切な剥がれの期よ

 

こころよい自由を許せる距離と

こころよい隔たりを維持して

独り独り個の単位を透かせて

楕円球になって静もっている

 

空が目に見えて

青さを増してきたようだ