詩 遥か(小さい花束より)

2013年07月26日 20:52

   遥か

手から離れた風船玉は

いつも心の片隅につながれていて

時々 糸の端を人差し指にまいて

引くしぐさをすると

見えないところで確かに手応えがあって

指は軽く風船のゆらぎを感じる

 

快晴の日はくっきりと

アドバルーンのように

風の日は尾をはね上げて

疾風のように流れ去るが

いつか雨の校庭でしぼんで濡れていた

おまえを見たとき

いじめっ子のようにいじめた

それからのおまえは

いつもかなたで上がっていて

引き寄せるしぐさに応えない

 

高々とゆれていておくれ

鮮やかに朱く上がっていておくれ

 

手から離れた風船玉は

心の片隅に確かにつながれている