詩(まだ見ぬ親しい人)「詩集風を抱く」より
2013年08月26日 08:40
まだ見ぬ親しい人
右前方から手を翳して
顔見知りのように近づいて来る
親しげに笑いかけ
私の輪郭にをなぞって後ろに回り込む
振り返ってみると来た道が白々とかげろっている
ゆらいで風向計を見ている
耳を澄ませて遠雷を聞いている
素直な心で岸辺の風景を見ている
背後に見開かれている傍観者の瞳
その瞳の向こう側にどんな生きものが息づいているか
どんな生きざまが透視図に引かれているか
おまえはいつか冷えた体温を寄り添わせ
同じしぐさをまねて
肌と肌の間にセロハン一枚挟んだ程の
切ない隔絶で押し寄せて来る
まだ見ぬ親しい人が
ふっと私を立ち止まらせる